ラブストーリー

【一部ネタバレあり】映画『ラスト・クリスマス』の感想・考察・評価:まさかこんなに泣かされるとは…

「去年のクリスマス、僕は君にハートを捧げたんだ」

あのワム!の名曲からインスパイアされた映画「ラスト・クリスマス」。

Twitterで見かけてからずっと気になっていた今作を公開初日から見てきました!

小難しく考えなくともすんなりと入ってくる映画のメッセージ性に驚きですし、ロンドンを舞台に展開される表現の仕方がとにかく素敵すぎて…。

「切なくも心温まるストーリー」

そんなキャッチコピーがしっくりとくる映画でした。

早速ざっくりと感想を書いていこうと思います。(記事後半部分、ネタバレあり)

『ラスト・クリスマス』のあらすじ

ロンドンのクリスマスショップで働くケイト(エミリア・クラーク)は、エルフの格好をして煌びやかな店内にいても仕事に身が入らず、生活も乱れがち。

そんなある日、不思議な好青年トム(ヘンリー・ゴールディング)が突然現れ、彼女の抱えるいくつもの問題を見抜いて、答えに導いてくれる。

ケイトは彼にときめくけれど、ふたりの距離は一向に縮まらない。

トムを捜し求めつつ自分の心の声に耳を傾けたケイトは、やがて彼の真実を知ることになる……。

引用:https://filmarks.com

よくあるあらすじですよね。

偶然に偶然が重なりよく出会う二人。

最初はあの人別にタイプじゃないし?なんて思っていたのに、毎日接することによってだんだんと気になっていく単純接触効果に弱い主人公。

落ち込んでいるときに優しくされ、ついには恋に落ちてしまったり。

なんだ、王道ラブストーリーなのか、映画『ラストクリスマス』は。

そんなことを思ってしまうあらすじです。

正直コテコテのハッピーエンドラブストーリーは展開も予想できるし単純だしあまり好きじゃない、、、

それでも寒い寒い冬に恋人と見るんだからキュンキュンできるだろうし良いだろう。

そんな風に僕は思っていたんですね。

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『ラスト・クリスマス』 ネタバレなし感想

正直、正直ですよ。

前述した通りよくある王道ラブストーリーだと思っていたんです。

それが良い意味で裏切られました。

もうね、ラストシーンでボロ泣きですよ。

大の社会人が。ボロッボロです。

頬につたう涙は止まらず、唇に染みる味はしょっぱい。

まさかここまで泣くとは思いませんでした。

ケイトのクソッタレな性格。トムの存在意義。ラストクリスマスという曲の意味。

全ての物事に辻褄があった時、エマ・トンプソン(脚本家)やるやんけ!ってきっとあなたも思うはず。

また、ケイト演じるエミリアクラークと、トムを演じるヘンリー・ゴールディングの演技もとても良かった。

エミリアに至っては、あそこまで眉毛を動くんかいなってくらい表情豊かで可愛いし、ヘンリーの堂々とした振る舞いには賞賛です。

ただのラブストーリーでは終わらせない。そんな気迫が伝わってくる映画でした。

映画館で周りを見渡せば意外と一人で来られている方も多かったですし、同時期に公開されている映画『ルパン三世 THE FIRST』がTwitterを見る限り割と酷評ですので、ほっこり温まる映画を見たい方には映画『ラスト・クリスマス』がオススメです。

『ラスト・クリスマス』 ネタバレあり感想・考察

※ここから先はネタバレを含む感想です。

あり得ないほど自己中なケイト

映画が始まり、まず最初に鼻につくのが主人公ケイトの振る舞いです。

しょっぱなから彼女は知らない男と一夜を共にし、男の彼女に家を追い出されていました。

家を追い出されたのかキャリーバック片手に生活する日々で、仕事にも身が入らず店長には自堕落エルフとバカにされ、親友や男の家を転々とする毎日。

挙げ句の果てには泊まらせてもらった親友の家に男を連れ込み、追い出されることになってしまいます。

同じ監督作品である『ブライズメイズ』を直近で見ていたので、つい彼女をブライズメイズの主人公と重ねて観ていました。

ポール・フェイグは、どうしようもなくだらしない下品な女性を描くのが得意だなぁと改めて思いながら映画を観ていましたね。

一方で、ここまで彼女が自己中なのには理由がありました。

映画の後半にわかるのですが、小さい頃から心臓に病気を抱えていたため、周りは大切に繊細に彼女を扱います。

大人になってから心臓移植をされることによって、普通の生活をおくれるようになった彼女ですが、過保護に育てられた影響により”普通”がわからず、あそこまで自己中になってしまったんですね。

そんな彼女を正しい方向に導いてくれる存在がトムでした。

突如現れるトムという存在

ケイトがいつも通り適当にバイトをしていると、異様に上を見続けている男性と出会います。

特にタイプでもなく何にも気に留めていなかったケイトですが、なぜか立て続けに再開する彼と徐々に仲良くなっていきましたね。

「なんでこんなにも偶然が続くんだ…、あり得ないだろ…、やっぱりよくある王道ラブストーリーなんだな…。」

なんて思いながら観ていましたが、最終的にトムの存在はケイトに心臓を与えたドナーだったんですね。

クリスマスの奇跡ってやつです。

この真実を知った瞬間に、今までトムがケイトに与えたものを考えると涙が止まりませんでした。

トムがケイトにあげたクリスマスプレゼント

自堕落で”普通”がわからず、もがき苦しんでいたケイトにトムは言います。

「Look Up!」上を向いて!と。

最低な生活に塞ぎ込んで下ばかり向いていた彼女ですが、彼の言葉通りに上を向いて周りを見渡せば知らなかった景色がたくさん。

人っ子一人いない細い裏路地、バッタ?イナゴ?の大きな看板、そしてライトアップされた雰囲気の良い素敵な公園。

ケイト一人では到底見つけられなかった景色ばかりです。

映画の前半でケイトはいつも手に携帯を持っていました。

しかし、トムに自己開示をし全てが好転しだしてからは、彼女が携帯を触ったシーンなんてあるのか?なんて思うほどに上を向いて様々なことに気づきながら改善していくケイト。

家族同士の問題。ホームレスへの接し方。店長であるサンタへの気遣い。旧ユーゴ人たちがヘイトされていたこと。

バスでのシーンなんて、以前までの彼女なら携帯を触ってスルーしていたシーンだと思います。

しかしながら上を向いて歩くことで気づきを得ながら、今の自分には何ができるのかを考え出す彼女。

結果、周りに優しくできるようになり、「他者に寄り添うことの大切さ」を知り、自分の人生も好循環していく。

みんなの前でケイトが歌うラストシーンでは、「命あることの貴さ」を彼女自身の口から発します。

トムがケイトに与えたクリスマスプレゼント

それはケイトの成長に繋がる大切なもので、下を向いて携帯ばかり見ていたら到底気づかないものでした。

ミスリードするよう仕込まれた伏線

真実を知るシーンではまんまとミスリードされたなぁとしみじみ思います。

トムを探すために家の中まで入ったケイトでしたが、家の中にいたのは家の管理人でしたね。

話を聞くとトムが住んでいたはずの家は1年半前から空き家でした。

ケイトの家出設定。

無断でスケート場に入り怒られる演出。

毎日同じ服で自転車に乗ってやってくるトム。

ホームレスへのボランティアにより生活が好循環していく流れ。

これらを観ていく中で、きっと大半の人が「トムはもしかしてホームレスかも?とにかくお金のないやつなんだ」なんて仮説を立てると思うんです。

そしてケイトと不動産屋の会話で、不法居住者といった単語が出てきた際に、やっぱりかー!と思いましたよね?僕だけ?

しかし彼は既に死んでおり以前のこの家の持ち主だったこと。

そしてケイトのドナーだったことに衝撃です。

ドッキリだということに薄々気づいており、カメラを発見してほぼほぼ確信を持っていたが、実際はドッキリじゃなかった時のホントドッキリに引っかかった三四郎小宮のような気持ちになりました。

出典:http://1noce.com/hontodokkiri-komiya

…すごくわかりにくいですけど、まぁよく練られた脚本だと感心しましたね。

違った意味で捉えられた「ラストクリスマス」という曲

ラストシーンではケイトが今までお世話になった人たちを前に、名曲「ラストクリスマス」を歌います。

字幕で観ていましたが、歌詞一つ一つの意味がこの映画の内容とマッチしていて。

でも本来ワム!が届けたかった表現とはちょっと違った見方をしていて。

真実を知った時にボロ泣き。

「ラストクリスマス」の和訳をみてボロ泣き。

見事に2度泣かされましたね。

そういった捉え方をするのか〜なんて、フェイグ監督はそんな形でインスパイアされたのか〜と感心しました。

「ラストクリスマス」和訳

去年のクリスマス僕は

君にハートを捧げたんだ

でも君は次の日に

それを捨て去った

今年は

涙を流さないように

僕はそれを(誰か他の)特別な人にあげるんだ

出典:https://ryugaku-kuchikomi.com/blog/last-christmas/

おわりに

ワム!とジョージ・マイケルの楽曲が至る所で使われており、小さい頃にこれらの曲をよく聞いていた僕自身としては非常に感慨深い作品でした。

内容的にも感情的にも、まさかもう一度見返したくなるような映画になるなんて思ってもいませんでした。

個人的に、2019年冬を代表するラブストーリーになれたんじゃないかと思います。

しかし以外にも劇場に人が少なかったのはびっくり。

結構テレビCMも流していた印象だったのにね。

にしても改めて思うのは、クリスマスの奇跡、素敵だなぁ〜と。